■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「日経4誌の損保関連ニュースをMBA的思考で斬る!」(サンプル)
「東京海上」解体新書 (サンプル)

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

「損保業界」と「発展途上国」を結ぶ会の事務局です。

__________________________________
  今日のテーマは 東京海上の「リスクベース経営」です
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


東京海上の「リスクベース経営」についてです。


東京海上グループでは2008年から、資本とリスクのバランスを適切にコントロール
することで収益を向上させる「リスクベース経営」に取り組んでいます。


同社HPの中で、「主要課題」についての言及がありますが、
 
ー益額の拡大
各事業での持続的な収益成長を目指します。特に、グループの中核事業である
 国内損害保険事業において、コンバインドレシオ※の改善を図ります。
 国内生命保険事業や海外保険事業においては、引き続き、持続的成長と収益拡大
 を図ります。また、グループ総合力、シナジー発揮による国内外での収益成長
 実現に向けた取り組みについても、引き続き、積極的に展開していきます。

 ※コンバインドレシオは、保険料を分母、保険金+経費を分子としてパーセン
  テージで表示する損害保険会社の収益指標です。100%は収支均衡を示し、
  100%を下回るほど保険引受面での収益性が高いことを示します。


∋駛楔率の向上
各事業の収益拡大や政策株式の削減継続等によって創出された資本・資金を
 成長分野への再投資や株主還元に振り向けること等により、グループ全体の
 資本効率の向上を図っていきます。
同時に、前中期経営計画において、グループ経営の基本的な考え方として導入し、
 発展させてきたリスクベース経営(ERM)を定着させ、「持続的収益成長」、
 「ROE向上」、「財務の健全性確保」の3つを同時にバランスよく達成すること
 を目指します。


後者の課題の中で、「リスクベース経営(ERM)を定着させ・・・」というくだりが
あります。


このリスクベース経営とは、“リスク”を基軸に意思決定を行うというプロセスを
あらゆる局面に組み込むことで、財務の健全性を維持しつつ収益性を向上し、企業
価値の拡大を図る経営手法、というものです。


英語では、ERM(Enterprise Risk Management)といいますが、直訳すれば企業リスク
管理となります。
現段階で統一された訳語はなく、一般的な定義としては、単にリスクを軽減するため
の取り組みだけに留まらず、リスクを定性/定量の両面から把握し、得られたリスク
情報を有効に活用して、会社全体のリスク/利益/資本を適切にコントロールしながら
意思決定を行うことで、企業価値の最大化を目指す経営管理手法ということになります。


同グループのこうした取り組みを支えているのが、保険負債の時価評価を行うため
のデータベースです。その構築の狙いと実際の取り組みについて、東京海上HDの
リスク管理部 次長の中原新氏が次のように語っていました。

Analytics 2013 - SAS FORUM JAPAN」(SAS Institute Japan主催)における中原氏
のコメントは以下「」内です。



「ここでいうリスクとは、“将来の不確実性”のことだ。具体的には、事業活動を
行った際に期待される収益と、為替変動や市場環境の変化といった不確実な事象に
よって発生した損失との差を、定量的に表わしたものだといえる。」


保険会社にとってのリスクは大きく2つあります。


1つめがコアリスクで、これは利益の源泉となるリスク。リスクと利益のバランス、
さらにはリスクが顕在化した時に会社が倒産しないように負債および資本とのバランス
を睨みながら、適切にリスクをコントロールしていくことが求められる領域です。


「コアリスクは、そのリスクを積極的に取ることで、利益の獲得を狙えるもの。
いわば保険会社にとっての本業の部分で、このリスクを回避していたのでは我々の
ビジネスそのものが成立しない。」


そしてもう1つが付随リスクで、こちらはコアリスクを取ることに付随して発生する
リスクをさします。言い換えれば、事業活動に伴って生じるリスクであり、事務処理上
のミスやシステムトラブル、あるいは事故や災害、犯罪などが相当します。


「付随リスクは適切にコントロールして、極力生じさせないことを目指すべきもの。」


このコアリスクと付随リスクに対するリスク管理がまさに保険会社にとってのERMであり、
同グループの目指したリスクベース経営そのものです。 IFRSやソルベンシー規制も、
リスクベースの考え方に移行しつつあります。

同社のこうした取り組みと歩調を合わせるかのように、現在ではIFRS(国際財務報告基準)
や、保険会社が抱えるリスクに対する資本の比率を一定水準以上に保つための監督上の
規制であるソルベンシー規制においても、リスクベースの考え方が徐々に導入されつつ
あるとのことです。



まずIFRSでは、バランスシート上の資産/負債を時価で評価することを重要視し、資産と
負債の時価増減を損益として把握することを要求しています。


またソルベンシー規制では保険会社のグローバル化を背景に、国際的なソルベンシー規制
の導入に関する検討が進んでおり、既に欧州では時価ベースによるソルベンシー規制への
移行準備が始まっています。この新しいソルベンシー規制では、IFRSの考え方に基づいて
作成したバランスシート上の時価ベース資本とリスク量とを比較することで、保険会社の
健全性を判断することになっています。



「私たち自身がリスクベース経営に取り組むために、またIFRSや新しいソルベンシー規制
に対応するために、保険負債の時価評価が必要になる。」



こうした流れを背景に、同グループではリスクベース経営を経営課題の中核に据えた取り
組みを開始、保険負債時価評価プロジェクトを立ち上げて、リスクベース経営を支える
データベースシステムの構築に着手したとのことです。



「保険会社の社会的な使命は、お客さまが事故や地震などの被害に遭われた時、しっかり
とした保証を提供するという役割を、将来にわたって果たし続けていくこと。そのため
にはリスクを分散し、うまく管理して、何百年に一回といった甚大な災害が発生した時
にも対応できるよう平時は適切な利益を確保し、資本を厚くして健全性を高めておくこと
が重要だ。それによってお客さまのリスクに対して、より一層の安心感をご提供すること
ができるようになる。」


社会の公器である保険会社は、常に「想定外」を想定し、非常事態における保険金支払い
能力を高める、態勢を構築しておく必要があります。どのような状況であろうとも、
リスクを分散し、適時適切な保険金を支払えることが使命である以上、他の産業や企業
以上に、リスクに意識を払い、リスク管理を徹底する必要があると考えます。


東京海上グループの意識の高さは、他の保険会社にとって大変参考になるのではない
でしょうか。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

「日経4誌の損保関連ニュースをMBA的思考で斬る!」では、損保会社特集が終了したこととに伴い、今週から1週間分の業界ニュースをピックアップした「まるごと損保業界ニュース」をはじめました。
多忙を極めて新聞・雑誌等を読む時間のない方にオススメします。