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「損保業界」と「発展途上国」を結ぶ会の事務局です。

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  今日のテーマは 東京海上HDの 繰延税金資産の取り崩し です
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東京海上HDの「繰延税金資産の取り崩し」についてです。

東京海上HDが先般公表した平成24年3月期の業績予想では、当期純利益が
前回発表の900億円→100億円に減っていました。


http://ir.tokiomarinehd.com/ja/NewsRelease/NewsRelease6089850442945393194/TopLink/TopLinkDocument/111205.pdf


この当期純利益の修正は、法人税率引下げに関連する法律が公布されたこと
に伴い、「繰延税金資産の取り崩し」を見込んだことによるものです。


保険業界では、昨日、T&Dホールディングスも、法人税率の引き下げに伴う
繰り延べ税金資産の取り崩しにより、平成24年3月期連結業績予想について、
純利益を120億円(従来予想360億円)に下方修正すると発表しました。


また、マスコミ各紙でも、「繰延税金資産の取り崩しによる赤字決算が多発
する」旨の記事をよく目にするようになりました。


損保ジャパンと日本興亜の合併は、2期連続赤字の見通しが濃厚となった結果
を踏まえた、経営トップの責任追及ということが理由の一つとしてあげられて
いますが、この赤字も「タイ洪水」と「繰延税金資産の取り崩し」によるもの
とされています。

この「繰延税金資産の取り崩し」はあまり目立ちませんが、実は、少し古い話
ではありますが、GMが大赤字となった一番の原因もこの「繰延税金資産」の
取り崩しによるものでした。


「繰延税金資産」は企業の赤字決算を増幅させる主犯格なのです。



繰延税金資産を正確に説明しようとすると、非常に長く、かつ難解な文章に
なってしまいますのでここでは割愛させていただきますが、簡単に言えば、
「将来支払うべき税金を現時点で前払いしている金額」を意味します。
それだけ将来支払うべき税金が少なく済みますので、これを資産として認めて
いるというものです。

そして、繰延税金資産を資産として計上すると同時に、利益が同額だけ増加
します。利益が増加するということは、純資産(株主資本)も増加します。


さて、この「繰延税金資産」、実は資産といっても、その資産性は非常に
心もとないものなのです。

繰延税金資産として計上されている金額は、すでに税金を前払いしている
ために、将来支払う税金が少なくなると見込まれる金額です。

ところが、将来支払う税金が少なくなるという恩恵を企業が受けるためには、
繰延税金資産に計上されている金額に見合っただけの税務上の所得(=税金
計算上の利益)を将来得ることが必要となります。


いくら将来の税金を減らす効果があるといっても、それは実際に、将来十分
な所得をあげて税金が生じないと意味がありません。仮に将来赤字でそもそも
税金が発生しないとなれば、「税金を減らす」こと自体が不可能になります。

そうなれば、繰延税金資産をそのまま計上している意味がなくなり、取り崩し
により今度は利益の減少(または赤字の拡大)を招くことになるわけです。

前述の説明にあるように、繰延税金資産を計上するとそれだけ利益が増加
(または赤字が減少)しますので、東京海上はじめとし、他の損保会社、
ひいては他業界の企業も、多少無理してでも強気の業績予測をたてて、
「将来、支払う税金が少なくなる恩恵を受けるだけの十分な利益を確保できる」
という前提で繰延税金資産を計上しているのです。そうすれば、見かけ上、
決算を良く見せることができるからです。


しかし、業績が悪化して、その前提が崩れてしまったとしたら・・・業績の悪化
による利益の減少や赤字の発生のみならず、計上していた繰延税金資産を取り崩
すことによる費用の増加も加わり、GMのように多額の赤字決算を余儀なく
されてしまいます。


日本でも、古くは、2003年にりそな銀行が繰延税金資産の取り崩しによる自己資本
比率の低下から公的資金注入を余儀なくされましたし、JALの2007年3月期決算
では544億円もの繰延税金資産取り崩しの影響で、従来の30億円の黒字予測が一転
して162億円の最終赤字になってしまったというのも記憶に新しいと思います。


「繰延税金資産」という時限爆弾をいつまでも抱えることなく、黒字確保しつつも
その爆弾を放出できる決算を果たせたという、東京海上HDの財務状況と、経営者
の判断は秀でたものがあります。


金融機関では、メガバンクを差し置いて、先んじて、修正決算を発表しています。
憶測ですが、「繰延税金資産」の取り崩しのために、当該金額を算定したいの
でしょうが、これがとても複雑で難しいということを聞いたことがあります。


東京海上HDは、そういう意味でも、この複雑な金額の算出を入念に準備して
いたと思うと、脱帽ですね。


生損保業界において、この時限爆弾を放出される時期はいつなのでしょうか。


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