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「損保業界」と「発展途上国」を結ぶ会の事務局です。

  今日のテーマは 東京海上の デルファイ買収(2)です
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東京海上の「デルファイ買収(2)」についてです。


前回は、デルファイ社の買収を通じて、M&Aの成否をきめる「ポストM&A」について
お伝えしました。

東京海上HDのHPにデルファイ社買収にかかるIR資料が掲載されていますが、すでに
ご覧になられた方もいると思いますが、念のためお伝えします。

http://ir.tokiomarinehd.com/ja/IRPresentation/2011/IndexContent/06/IndexContent/IndexLink/pdf3/delphi_J.pdf


確認いただくお分かりいただけると思いますが、「海外保険事業の成長の軌跡」という
東京海上が描く成長のスパイラルには、「戦略性」が伴います。

投資銀行やM&Aアドバイザリーが、持ち込んできた優良案件で、かつ円高が後押しして
「衝動買い」をしているわけではないと思います。
または、MS&ADに企業規模で水をあけられたから、必死になって規模で抜かすために、
買収を繰り返しているわけでもないと思います。

企業経営の根幹である戦略や思想に基づいてM&Aを展開しているのでしょう。


そこで、今回は日ごろ目にする、口にする「M&A」について経営学的(やや学術的)に
解説させていただきます。


M&Aとは、組織も人材も資金もそして株主も全て統合してしまうことをさします。

このため合併(M&A)すると文字通り一つの会社となりますが、このポピュラーなM&A
の手法ですが、組織・人材面の統合を要することから個性の強いオーナー企業同士のM&A
にはあまり適さない方法といえます。

損害保険会社の場合は上場会社ですし、オーナー企業とはいえませんので、M&A自体は
経営強化としては適している「手法」と考えてもいいかもしれません。

それでは、会社法で定められている合併(M&A)の方法についてですが、以下のとおり
2つあります。


1.一方の会社に全てを統合し、もう一方の会社は法律上消滅してしまう方法 (吸収合併)
2.新会社を設立し、そこに全てを統合し、残った会社は全て法律上消滅してしまう方法 (新設合併)


一見すると、2.の方法は両方の会社が消滅し、新会社に統合した上でお互い協力してゼロ
から再スタートを切れるので平等に経営にあたれそうな気がしますが、実務上の手続きが
煩雑なためほとんど使われていません。

過去の損害保険会社の合併で使われたことはないと記憶しています。


それでは、経営力を強化する手法の一つが「M&A」と説きましたが、このM&Aの
メリット・デメリットにはどういったものがあるのでしょうか。

会社と株主の観点から考えて見ます。なお、大なり小なりの合併(M&A)は保険代理店
においてもありますので、保険代理店の方も参考にしてください。



●存続会社 (買手企業)にとって

〔メリット〕
 1.買収資金が必要ない。
 2.企業規模が拡大し、スケールメリットが受けられる。
 3.買収価額のうち営業権相当額について償却できるため、節税メリットがある。
 4.建物などの償却資産についても償却できるため、株式取得に比べれば節税メリットがある。

〔デメリット〕
 1.消滅会社(売手企業)の株主が新たに株主として加わるため、経営の舵取りが難しくなるケースがある。
 2.消滅会社(売手企業)に簿外債務があった場合、完全に引き継ぐ必要がある。
 3.手続きがやや煩雑。
 4.消滅会社 (売手企業) が法律上なくなってしまうため、売手企業の抵抗が強い。


●消滅会社 (売手企業)にとって

〔メリット〕
 1.企業規模が拡大し、スケールメリットが受けられる。
 2.合併契約で定めておけば経営陣が存続会社 (買手企業) の経営陣に名を連ねることも可能。

〔デメリット〕
 1.手続きがやや煩雑。
 2.消滅会社 (売手企業) が法律上なくなってしまうため、従業員の抵抗が強い。


●消滅会社 (売手企業) の株主にとって

〔メリット〕
 1.存続会社 (買手企業) の株主として経営に参画できる。

〔デメリット〕
 2.損害保険業界においては稀有なケースかもしれませんが、買手企業が非公開企業である場合、
   株式の現金化が難しい。


以上の通り、立場ごとにメリット・デメリットが違ってきます。

肌感覚として理解できるものから、相手心理上の問題であり、解決しずらい課題など幅広く
メリットデメリットが存在しますが、合併相手や相手方の対応によってはこれらのメリデメ
も変化してきます。


欧米企業とは異なり、一方的な吸収という手法を嫌がる日本企業の場合、「対等の精神」という
魔法の杖を使って、ソフトランディングを図るケースが多いです。


また、合併の成否は相手次第といいますが、その相手の品定めも重要な任務となります。
この品定めをM&A用語としてはデューデリジェンス(Due Diligence)と呼びます。


いわゆる相手企業を精査することですが、買収前に行う買収対象企業の調査することを指します。

公認会計士、弁護士などが、買収対象企業の事業リスク、財務状況、事前情報との照合等を
調査します。中小企業のM&Aにおいても、最終的な買収価格、買収条件の決定や買収の可否の
ため、実施されることがほとんどです。


このデューデリジェンスは、通常「デューデリ」と呼ばれることが多いですが、もう少し細分化
されてデューデリされます。


一つ目は「財務デューデリジェンス(Financial Due Diligence)」。 

資産の劣化、不良資産の存在、負債の過少計上、重要な簿外債務の発見等、買収先企業の価値判断
をするため、企業が作成した財務諸表の適正性を検証することです。


次に、「ビジネスデューデリジェンス(Business Due Diligence)」。

買収対象企業の属する市場規模やその動向、競合環境の推移等を調査することです。
買収対象企業を多面的に分析し、買収の適否、シナジー効果の大小、買収後の統合戦略等を把握する
ために行われます。ビジネスデューディリジェンスにおいては過大な希望や夢を排除し、事実に
基づいて冷静に判断することが重要と言われています。

大概の損害保険会社は、かなりストレッチした目標数値が商品部から報告され、その数値を経理部
が取り纏めて、経営者判断をもって、目標数値を確定させるようですが、統合比率を決定する上で
重要な要素の一つにもなっていますので、夢のような数値になることが多いようです。
これを精査するのが、このデューデリですね。


最後が、「法務デューデリジェンス(Legal Due Diligence)」。

買収対象企業に法的リスクがあるかどうか、また、買収企業のM&A戦略の実行上、阻害要因が
ないかどうか、補完しなければならない法的問題点がないかどうか等を調査するため、取引の
前提となる契約関係などの法律上の有効性を評価することです。


中小型のM&A案件では取引コストを節約する目的から法務デューデリジェンスが省略されること
が多いようですが、リーガルリスクは取引額とは比例するわけではなく、例えば、買収した会社の
評判までも下げてしまうような違法行為が行われた場合、被害は甚大となりますので、相手会社の
規模問わず、必ずやっておいて方が良いことです。

契約者や保険代理店との係争がはらんでいると、将来の禍根になりますので。


以上、M&Aの世界の一部をご紹介しましたが、このような作業を各損害保険会社は投資銀行や
証券会社などのアドバイザリー会社や専門会社を通じて行なっています。

この作業量は相当なものだと思われます。統合、合併を控えている会社はこの作業をする必要が
ありますが、一方で東京海上日動など統合後の調整などをする必要はありませんので、絶対的な
余裕があります。


この余裕をどのように使うのかにも経営手腕が問われます。
隅社長が以前言っていた「ライバル会社が統合に注力している間隙を縫って攻める・・・」的な
発言は、このように海外事業に打って出ることを示唆していたのかもしれません。

合併・統合をする会社、しない会社の運命はどのようになるのでしょうか。。。。
数年後にある程度結果が分りますね。


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